ああ、この子は分かっていないのだ。
どれだけ僕を喜ばせているか。
「あの、バレンタインだから・・・」
かさりと、紙袋の中からラッピングされた袋を僕に差し出した。
少し恥ずかしそうにした俯いた顔はとても愛らしい。
「開けてもいいのかな?」
こくりと頷く彼女の了解を得て袋を開けると中から黒色のマフラーが現れた。
予想外の物の登場に呆気に取られている僕をどう勘違いしたのか彼女は慌てだした。
「えっと、不恰好でごめんなさい…」
「そんなこと無いよ、亜莉子ちゃん。本当に嬉しいよ」
一瞬遅れて僕はそう言って彼女に微笑みかけた。
少しだけ顔色を伺うようにして彼女はもう一度僕に確認を取る。
「本当?」
「本当だよ」
本当に嬉しいのだ。
手編みのマフラーなんて物を貰えるとは思っても見なかった。
せいぜい義理チョコ程度だろうと踏んでいたのだ。いつかは本命を狙うつもりだが。
「よかった・・・実はね、叔父さんの分と二人分編んだの」
色違いなんだけど、やっぱりこっちの色が似合うかなって思って。
緊張してたのか、ほっとひと息つくと安心した様子で彼女は喋り始めた。
色違い。
耳を通り抜ける情報によればブラックとホワイト。あの男とペアだなんて。
幸せの絶頂から地獄に突き落とされたかの様な気分がした。
いや、実際にそうなのだ。まさに天国から地獄。
頭を殴られたかのような眩暈に襲われながら精一杯の笑みを浮かべた。
彼女の好意が詰まった贈り物、できるなら違う意味での好意が欲しい所だけれど。
いずれは狙ってみせる
<<ブラック、ホワイトどちらがお好みで?>>
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「知ってるだけで十分さ」の続きみたいな感じでした。
マフラー色決定の為だけにアンケートをとったのです。
タイトルの色は公式コラムでの武村さんの名前の色と同じです。
紫ですよ、紫。彼にぴったりな色ですね(笑)
<<後日>>
「やあ」
「ああ、あんたか」
「「・・・・」」
「君も亜莉子ちゃんのマフラー付けているんだね」
「お前こそ」
「「・・・・」」
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