何度見ようとこの景色は変わらない
ただただ赤く、私達を惑わすアリスの海
 
 
「完璧を追い求めるのは」
 
 
無機質な声が波音の静かな赤い海に響いた。
海に佇む二人を赤い空と海は鮮やかな赤に染め上げる。
 
 
いつまでもアリスの歪みを吸い取っていられないだろうに。
どんなに記憶を吸い上げたところで、傷は癒えはしないのだ。
 
番人は聡明なシロウサギが分からない筈がないと知っていた。
 
 
「分かっているよ、それは十分に」
 
 
それにねぇ、
 
シロウサギは手を後ろに組み、さくさくと浜辺を歩み出した。
波打ち際を歩いても、波は拒絶するかのようにその足を避ける。
 
 
「あの世界はいつだってアリスを傷つけているんだよ」
 
 
だから、アリスの歪みは減らない
癒えない傷口は絶える事無く血を流している
 
 
淡々と言葉を紡ぐシロウサギに番人はもう何も言わなかった。
穏やかな表情を浮かべたその白い横顔がぐにゃりと大きく歪んだ。
 
 
「憎いねえ、世界が」
 
 
愛するアリスを傷つけるだけの世界は要らない。
とても明るい声でそう告げた彼はもはや歪みの彼方にいた。
 
     
ああ、ここまできてしまった <<赤い海に白兎が沈んだそうだ>>
  ++++++++++++ 考えてみたらビル別に要らないような・・・(ぼそり)