「ただいまー」

少し小さな声で自室のドアを開けた。
外は雪は降らないものの、凍えるように寒かった。

「あれ・・・・?」

いつもなら返ってくる返事はない。
部屋の中を見回しても猫の姿はなかった。

代わりに部屋の真ん中には、数日前からこたつが置かれている。
一人用の可愛らしいこたつだ。

一人だけのこたつだなんて贅沢だからいらないと言ったけれど、
叔父さんは、勉強するのに必要だろうと言って買ってくれた。

やっぱり、ああ見えても叔父さんは優しい。

コートを脱ぐと部屋の寒さに震えた。
着替えるのは体が温まってからにしよう。 

そう思って私はこたつに座り、足を伸ばそうと・・・

「ぐえっ」

ごろりと反対側から猫の頭が転がり出てきた。

「チェシャ猫・・・?!何で入ってるの!」

いつもならば、こたつの外に乗っかっているはずなのに。
おまけに切っていた筈の電源は入っていた。

頭だけだというのに、どうやって付けたのだろうか?

「大変。顔真っ赤になってるじゃない・・・」

猫の顔は茹でダコならぬ、茹で猫になって真っ赤だ。
何時から、こたつの中に入っていたのかしら。

私は猫の頭をぱたぱたと手であおぐ。

「危なかったよ、アリス。もう少しで向こう岸が見えるところだった」

こたつに入ると出られなくなる気持ちは分かるけれど、
酸欠になるまで入っているのは問題外だ。

「ずっと入ってて、干からびても知らないからね」

今度は猫の干物が出来上がってるかもしれない。
我ながらつくづく変な心配事だと思った。

「たまには猫も入ってみたいのさ」

私の心配をよそに猫はこたつの上に上がり、平然とそう言ってのける。

もう、チェシャ猫ってのんきなんだから。
猫に呆れつつ、台の上に山積みされた蜜柑をひとつ取り出して剥く。

水分を補給するなら、蜜柑が最適だし、
やっぱり、こたつと蜜柑の組み合わせは必須よね。

猫に蜜柑を差し出すと、目の前に並んだ2つの組み合わせに少し笑えた。

「それに猫と蜜柑もね」
     

<<こたつと温かな平穏の日々!!>>
  ++++++++++++ 「蜜柑色の猫、なんて笑えるかしら」か「蜜柑色の猫なんて、笑えるかしら」 さてどっちだったのでしょうね?・・・忘れてしまったのです(汗) それと蜜柑色の猫といえば「みかん絵日記」でしょう。知ってる人いるかな?