春といっても名前だけだ
 
ひんやりとした猫の手は私の手の熱を奪ってゆく
その分猫の手は温まるのかもしれないけれど
 
猫のくせにチェシャ猫の手は冷たい
どちらかというならば、体は温かいのに
 
「手が冷たい人は心が温かいのよ」
 
ほら、私は手が温かいから心が冷たいの
冗談めいて私は猫の手を握り返した
 
「アリスは心が冷たいのかい?」
 
「そうよ」
 
少し驚いたような声をして猫は私の手を見つめる
迷信なんだけど、この猫なら信じそうな気がした
 
「じゃあ」
 
にんまりと笑うと私の手をもっと強く握って
 
「これで僕もアリスと同じだね」
 
「馬鹿猫・・・」
 
 
猫の手も私の手も生温い温度になった
 
    

<<もう見分けなんてつかないよ>>
  ++++++++++++ 定番ネタです。 ちょっぴりどころか猫が捏造されてる気がします・・・。