「あれ・・・どうして私ここに」

いつの間にか私は椅子に座らされていた

蝋燭の光に照らし出され、ぽつんとそこだけ暗闇の中に浮いているかの様だ。
長いテーブルには白いクロスが敷かれ出来立ての料理が所狭しと並んでいる。 
 
「さぁ、どうぞアリス」
「ビル・・・?」

すっと横から皿を差し出したのは、あの蜥蜴のビルだ。
置かれた銀色の盆を開けられるのを、されるがまま見ていると・・・
 
「!?」 
『私を食べて!!』 

皿の上に現れたローストチキンは、
ぴょんぴょんと跳ねて、私に食べるように催促してきた。

びっくりした・・・まるでストロベリージャムパンと同じようだ。
もし食べなかったら・・・また酷い目に合うかもしれない。

足の部分にリボンを巻かれた姿はそれなりに可愛く見ようと思えば見える。

うん、そう思わなきゃ。
なによりも香ばしくキツネ色に焼けた姿は美味しそうだ。

そう思いフォークとナイフをいざ握ろうすると、
いきなり後ろから誰かに首根っこを捕まれて椅子から立たされた。

「アリス、ソレは美味しくないよ。僕をお食べ」
「?なんでチェシャ猫・・・あっ、待って七面鳥が」

遠ざかる蝋燭の光に手を伸ばすけれど、
猫はずんずんと暗闇の中を進もうとする。

「折角食べようとしたのに・・・」

それに猫を食べようなんて私は思わないし、
猫の丸焼きと鳥の丸焼きなら、きっと鳥の方が美味しい。
微妙に間違ってる気もするけれど、とにかく猫は食べない。

そんなことを引きずられながら考えていると、今度は手を誰かに掴まれた。 

「まあ、私達のアリス!そんなにも七面鳥が食べたかったのね!」
「どうして女王さまが・・・・」

次々と訳の分からないことばかり起こって頭が痛くなりそうだ。

掴まれた手を見れば、いつものように鎌を持って女王は立っていた。
普段と違う所といえば、何故か反対の手に生きた七面鳥を持っている。
 
すると、女王は私の手を離し、鎌を大きく振って・・・

スパンッ!
スパンッ!
スパンッ!

素振りでもするかの勢いで、どこからともなく
何羽もの七面鳥を出しては首をばっさばっさと落としてゆく。

「やめて!私そんなに食べられないし!!」

七面鳥ばかり食べられないのもそうだけれど、
それよりも、もったいない。

そんな私の呼びかけも空しく鎌を振る手は止まらない。
こうなったら、チェシャ猫に止めて貰うしかなさそうだ。

首を掴んでいた手を振り払って、猫を見上げたけれど・・・

「さあ、アリス。僕をお食べ」
「いえ、アリス。あちらでディナーを」
「アリス、私頑張りますから見ていて頂戴!」

再び私の首を掴んで、チェシャ猫はまた進もうとするし、
消えたと思ったはずのビルが私の手を握って反対方向へ進もうとするし、
女王はいつまでも七面鳥の首を刈り続けているし・・・ 


ああ、もう 


「誰かどうにかして!!」 

「!びっくりした・・・寝言か・・・」 

人が枕元にプレゼントを置いた瞬間に叫ぶなんて本当に人騒がせな姪だ。
眉をしかめて眠る姿からいって、あまり良さそうな夢を見ているとは思えない。

足音を消してそっと半開きになっている部屋のドアまで下がる。
明日クリスマスプレゼントに気づいたら、どんな顔をするのだろうか。 

こういった行事はあんまりした事がなさそうだし、興味が無いかもしれない。
この姪のことだから、遠慮をしていた可能性もあったが。

「今日ぐらいは家族面したって罰はあたらないよな」

それに、もう少しいい夢見て眠れよな。
小さな苦笑と共に扉は閉まり静寂がまた訪れた。

その言葉に答えるはずの本人は夢の中を彷徨っている。
代わりに闇の中で猫がにんまりと、そして楽しそうに答えた。

「アリスは幸せな夢を見てるのさ」

     
Merry Christmas!! <<赤や金色たくさんの色に囲まれて君は夢を見る>>
  ++++++++++++ クリスマスギリギリに書き終わったものです。 いいえ!外国では、25日以降もまだクリスマスですよ!! うん、だから大丈夫!!(コラ) そしてオチが思いつかずに叔父さん登場。