おばあちゃんの家に引っ越してから随分たった

新しい生活に戸惑うこともたくさんあるけれど、
一緒に帰る友達だってできたし、
だいぶ順調な生活をしていると自分でも思う

そして家まで帰り道はもう少しの距離。
私は角を曲がった

「あれ・・・?」

コンクリートブロックの上に、
チェシャ猫の頭がちょこんと乗っかっている。

人に見つかったらどうするつもりなのかな。
まず見えないと思うんだけれど・・・。

心配してきょろきょろと周りを見渡しても人はいない。

幸いにもこの時間は車も人通りも少なく、
道路にスズメがたくさん降りて遊んでいるぐらいだ。
何羽か可愛らしい鳴き声をあげて踊るように遊んでいる。

もしかして、迎えに来てくれたのかな?
チェシャ猫にも可愛いところあったんだ・・・。

思わず頬が緩んだ。

かなり失礼なことを言っているけれど、
チェシャ猫はいいの、私の猫だから。

「チェシャね・・・」

近づこうとして名前を呼びかけた、その瞬間に、
コンクリートの上に乗っていた猫の頭は空を飛んだ。

本当にチェシャ猫が空を飛んだ。
落下したっていうのが正しいのかもしれない。


・・・・・ごくん。


「・・・・・・!」

今、何した?!
何が起こったの?!

思わずパニックに陥って、私は固まった。
動かない頭で私はどうにか状況を判断する。

道路にはスズメの代わりに猫の頭がごろりと転がっている。
そして飛んでいった雀の数が一羽減っていた。

・・・スズメ、食べちゃった・・・

私は呆然と地面に転がっている猫の頭を見つめた。
灰色フードのにんまり顔はいつもと何も変わってない。

猫の頭は口をひと舐めしたあと、
こちらの視線に気づいたのか私に向き直る。

「アリス、お帰り。道の真ん中に立っていると危ないよ」
「・・・・」

考え込む私に文字通りの意味の何食わぬ顔で、
おまけにチェシャ猫は忠告までしてくれた。

別に何も食べてないふりしなくたっていいのに。
そんなにお腹が空いていたのかしら。

猫はころころと転がって私の足元に擦りつく。
その姿は四つ足の猫と同じくらい愛らしく見える。

・・・チェシャ猫だって食べないと生きていけないよね。

たぶん、頭だけでも栄養が必要なのよ。
うん、考えるとお腹がすくし、一応猫だし。

どうにか自分を納得させ、私は猫に言った。

「チェシャ猫、今度キャットフード買ってきてあげる」

 
     
Innocently <<たまには獲物をつかまえて。>>
  ++++++++++++ 猫バージョンが実はお蔵入りしております。 祖母の家にいる猫は本当に屋根から飛んでツバメをよく食べてましたよ。 より好みするんですよ!雀よりツバメがおいしいらしいです。